【症状別】犬に対するCBDの効果まとめ(エビデンス解説)
てんかん発作、慢性痛、関節炎、皮膚の悩み、不安、ストレス…
犬の抱えるトラブルは人間と同じように様々ありますが、万能と謳われるCBDは本当に効くのか?
ここでは希望的観測を極力排し、信頼性のあるエビデンスをもとに解説していきます。
簡易まとめ
犬でのCBD研究は、副作用が少なく安全性が高いとされる点も後押しし、着実に進展しています。
以下は、犬においてCBDによる改善効果が期待されている5つの症状です。
まず簡単に、それぞれの研究の進行度(エビデンスの強さ)をご紹介します。
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1. てんかん
研究の進行度:★★★★★
複数の高レベルな試験によって、発作の起こる頻度や日数の減少が確認されています。
2. 痛み・炎症
研究の進行度:★★★★☆
複数の試験で、歩行や活動量の改善が報告されています。
3. 皮膚・アレルギー症状
研究の進行度:★★★☆☆
作用の根拠はあるものの、犬を対象にした試験データはまだ少ない段階です。
4. 不安・ストレス
研究の進行度:★★★☆☆
小規模な試験で良好な結果を示しているものの、大規模な検証は十分とは言えません。
5. 腫瘍
研究の進行度:★☆☆☆☆
細胞や小動物における研究の結果から有望と見られていますが、犬を対象とした信頼性のある試験はまだほとんど行われていません。
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このように、確証に近づいている領域もあれば、まだまだ研究が必要な領域もある、というのが今の段階です。
次に、各症状について詳しく見ていきましょう。
(必ずしも犬へのCBDの医学的効果を保証するものではないことをご了承ください。)
1. てんかん治療
🔬
CBDは、人の難治性てんかんの発作頻度を減らすことが分かっており、アメリカやEU、オーストラリアなどで医薬品としても承認されています。
日本でも医薬品承認に向けた治験が進行中で、市販のCBDを利用している患者さんもいます。
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犬を対象にした高レベルの試験でも、CBDを投与された犬たちの発作頻度が減少したことが報告されています。
(二重盲検ランダム化比較試験で、CBD投与群の発作頻度の中央値が低下*)
*参考文献
McGrath, S., Bartner, L. R., Rao, S., Packer, R. A., & Gustafson, D. L. (2019). Randomized blinded controlled clinical trial to assess the effect of oral cannabidiol administration in addition to conventional antiepileptic treatment on seizure frequency in dogs with intractable idiopathic epilepsy. Journal of the American Veterinary Medical Association, 254(11), 1301‑1308.
2. 痛み・炎症の緩和
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CBDは、ECS(エンドカンナビノイドシステム)や、TRPV1(痛覚伝達に関わるイオンチャネル)、5-HT1A(セロトニン受容体)などを介して、痛みの知覚を調節し軽減します。
また、人で確認されているCBDの抗炎症作用が、犬においても同様の仕組みで働くことが期待されています。
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実際に犬を対象とした研究で、CBDの投与によって痛みの緩和効果が示されました。
(体重1kgあたり2mgの用量で12週間投与した結果、疼痛スコアが改善し活動量が増加*)
*参考文献
Gamble, L. J., et al. (2018). Pharmacokinetics, Safety, and Clinical Efficacy of Cannabidiol Treatment in Osteoarthritic Dogs. Frontiers in Veterinary Science, 5, 165.
3. 皮膚・アレルギー症状の緩和
🔬
CBDは、人で確認されている免疫調節・炎症抑制作用を通じて、アレルギーに伴う皮膚症状(かゆみ、炎症、腫れなど)を軽減する可能性があります。
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犬の血液での研究でも、免疫調節・抗炎症作用が示されました。
(犬の全血を用いた研究で、CBDが炎症性サイトカインの産生を抑制*)
ただし、犬を対象とした高レベルな試験はまだ少なく、確証に至っているとは言えません。
*参考文献
Gugliandolo, E., Licata, P., Peritore, A. F., Siracusa, R., D’Amico, R., Cordaro, M., Fusco, R., Impellizzeri, D., Di Paola, R., & Cuzzocrea, S. (2021). Effect of Cannabidiol (CBD) on Canine Inflammatory Response: An Ex Vivo Study on LPS Stimulated Whole Blood. Veterinary Sciences, 8(9), 185.
4. 不安・ストレスの緩和
🔬
CBDには、ECS(エンドかンナビノイドシステム)や5-HT1A(セロトニン受容体)を介した神経伝達の調節による抗不安作用もあり、人の社会不安障害や全般性不安障害に対する緩和効果が確認されています。
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犬においても、分離や車移動によるストレスが軽減されたと報告されました。
(体重1kgあたり4mgのCBDを単回投与した結果、ストレスに関連する行動・生理指標が改善*1)
また、継続的な投与でも犬のストレス軽減が示されました。
(6か月間の日常投与で、コルチゾール濃度、鳴き声、リップリッキングなどのストレス指標が有意に低下*2)
犬に負担の少ない形で、更なる研究が望まれる領域です。
*参考文献
1 Hunt, A. B. G., Logan, D. W., Earle, K. E., Lopez, A. M., Kropf, B., Harjes, C. B., Morrow, S. A., Richardson, C. A., & King, T. (2023). A single dose of cannabidiol (CBD) positively influences measures of stress in dogs during separation and car travel. Frontiers in Veterinary Science, 10, 1112604.
2 Flint, H. E., Hunt, A. B. G., & Logan, D. W., & King, T. (2024). Daily dosing of cannabidiol (CBD) demonstrates a positive effect on measures of stress in dogs during repeated exposure to car travel. Journal of Animal Science, 102, skad414.
5. 抗腫瘍作用
🔬
CBDは、がん細胞の増殖を抑制し、自然死(アポトーシス)を促進する作用を持つことも研究で示されています。
さらに、血管新生の抑制や炎症の軽減を通じて、腫瘍の進行を遅らせる可能性も報告されています。*
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ただし、犬を対象とした信頼性のある試験はまだ少なく、研究の初期段階と言えます。
*参考文献
Velasco, G., Hernández‑Tiedra, S., Dávila, D., & Lorente, M. (2016). The use of cannabinoids as anticancer agents. Progress in Neuro‑Psychopharmacology & Biological Psychiatry, 64, 259–266. https://doi.org/10.1016/j.pnpbp.2015.05.010
その他の有望な研究データ
上記の5つの症状に加え、CBDの効果が期待されているその他の領域についても
新しいデータを随時ご紹介します(最終更新:2025年12月10日)。
吐き気の緩和・食欲の改善
🗒️
CBDは5-HT1A(セロトニン受容体)に作用することにより、吐き気を抑制し、食欲を改善する可能性があります。
ラットなどの試験でCBDが吐き気や嘔吐を抑え、摂食行動を促進したと報告されています。*
🐕
犬における実際のデータはまだ限られていますが、犬への応用への有望な根拠となっています。
*参考文献
Parker, L. A., Rock, E. M., Limebeer, C. L., & Mechoulam, R. (2012). Cannabidiol, a non‑psychotropic component of cannabis, attenuates vomiting and nausea-like behaviour via indirect agonism of 5-HT₁A somatodendritic autoreceptors in the dorsal raphe nucleus. British Journal of Pharmacology, 165(8), 2620–2634.
高齢犬の攻撃性低下
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47,444頭の犬を対象にした、史上最大級の犬のCBD使用研究において、
特に高齢犬の攻撃性が軽減される傾向が確認されました。
(CBDを2年以上継続的に使用している犬は、時間の経過とともに、吠え、噛みつきなどの攻撃性スコアが低下*)
ただし、あくまで相関であり、「CBD を使ったから攻撃性が下がった」と因果関係を証明したわけではありません。
*参考文献
Conrow, K. D., Haney, R. S., Malek-Ahmadi, M. H., Albright, J. D., Kaplan, B. L. F., Snyder-Mackler, N., Kerr, K. F., Su, Y., Promislow, D. E. L., Bray, E. E., & Leung, M. C. K.; Dog Aging Project Consortium. (2025). Demographic features, health status, and behavioral changes associated with cannabidiol use in the Dog Aging Project. Frontiers in Veterinary Science, 12, 1612524. doi:10.3389/fvets.2025.1666663
注意点
以上のように、CBDは犬の健康において効果を期待できる領域が様々ありますが、使用にあたっての注意点もいくつかあります。
・犬種・体重を含む個々の体質によって反応が異なる場合がある。
・肝酵素(ALP/ALT)上昇の報告があり、長期投与時は血液検査によるモニタリングが必要。
・抗てんかん薬・NSAIDs等との併用は相互作用のリスクも考えられるため、獣医師の指導下で行うことが推奨される。
・CBD製品には、濃度やTHC残留値などのばらつきがあるため、製品の違いによる影響がある。
愛犬に合う量とタイミングの見極め、経過観察、薬との併用への注意、適切な製品選びが大切です。
犬用CBDの使い方
犬用CBD製品の使い方についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
関心のある方は是非ご覧ください。
あなたと愛犬が、健康で豊かな時間を共に楽しめますように。